世の中には様々な無線通信技術があります。
それぞれについて調べてみると、
“通信距離 ○× km以上!!”といった説明が記載されているもの、結構見かけます。

我々ハートランド・データが提供しているLoRaモジュールのカタログにも
なんと「通信距離50km」の記載が・・・。

「本当にそんな距離まで通信出来るの?」と疑問を持ちますよね。
実際にサンプル購入し通信を行ってもカタログスペック通りには通信出来ないことのほうが多いと思います。

今回は、そんな長距離の通信技術がスペック通りの威力を発揮するために重要な要素である
アンテナ特性
について、LoRaモジュールで行った測定の結果を交えてお届けしてまいります。

LoRaモジュールって?

ハートランド・データのLoRaモジュール
フ〇スクの旧容器サイズに収まるLoRaモジュール

そもそもの話、LoRaとはなんでしょうか。

LoRaとは、通信距離や消費電力の性能に優れるLoRa変調を採用した通信方式のことです。
LPWAネットワーク(低消費電力、低ビットレート、広域カバレッジを特徴とする無線通信)に分類されます。
LoRaの通信速度はWi-Fi等と比較すると非常に低速ですが、小さな電力でのデータ送信が可能であるため、
小型の電池で長期間駆動させるような機器に適しています。

ハートランド・データが提供しているLoRaモジュールは、このLoRa通信を使用して広域ネットワークを構築するのに最適なモジュールです。エッジデバイス(データ送信側)もしくはゲートウェイデバイス(データ受信側)として動作可能で、手続き不要でワイヤレスネットワークを構築できます。

最低2個のモジュールからネットワークの構築と通信ができ、1個のゲートウェイデバイスを中心としたスター型ネットワークの構築も可能で、長距離通信により広い領域をカバーできます。また、通信方式はプライベートLoRa(独自プロトコル)に対応しており、使用エリアが制限されません。
ゲートウェイ側に弊社ワイヤレス・インテリジェント・プラットホーム(Wip)を接続することで、既存のローカルネットワークやインターネットへの接続もできます。
しかも、国内電波法「技術基準適合証明 (技適)」取得済み。
広域に無数のデバイスを接続するネットワークが必要となるIoT/M2Mでの使用に最適です。

遠距離通信に必要な環境について

これはLPWAに限った話ではありませんが、
送信機や受信機の通信アンテナを設置する場所の周囲の環境によって実際の通信距離はかなり変わってきます。
特に”通信距離100km以上”を狙う場合、以下の要素をそろえることは非常に重要な要素となります。

・周囲に障害物が少ない(富士山頂上やスカイツリーなど)
・お互いを見通せる(間に障害物がない)

この条件を考えると、
カタログに記載されている距離で通信できるのは
非常にロケーションが良い場合の話
といえるでしょう。

屋内にて使用する場合、周囲には障害物(壁やデスク、棚、動き回る人間など)が多く、送信側から受信側は見通せないことがほとんど。
こういった場合の通信距離は極端に短くなります。
(とはいえ、WiFiやBluetooth vs LPWAで比較していくと、通信距離はLPWAの方が断然長いです。)

また、使用するアンテナのアンテナ特性によっても通信距離は大幅に変わります。
アンテナ特性、といってもいろいろあるのですが、特に重要となるのが以下の項目。

・アンテナ種類(大きさ)
・マッチング
・ゲイン
・指向性

基本的に、通信距離を長くするためには、指向性が無く、ゲインが高いアンテナを高い位置に設置します。
有名どころの通信タワーだと、東京タワーやスカイツリーなどがイメージしやすいかと思います。

実際に測定してみる


さて、前置きはこのくらいにして、
アンテナ特性や周辺環境が通信にどの程度の影響を及ぼすのか、
弊社LoRaモジュール “LR0002” を使用して、実際の受信感度を測定してみましょう。

今回の測定では、近距離における受信信号レベル(RSSI値)の変化を調査すべく、
送信側のLR0002から受信側のLR0002へ、200Byteのデータを100回送信し、受信感度レベルを記録していきます。
※本記事では受信側で計測された信号強度を受信感度と定義いたします。

通信環境や設定は以下の条件で固定しています。

通信環境
送信側:LR0002をRaspberry-Piへ接続。
受信側:LR0002をWindows PCへ接続。

通信設定
・送受信アンテナ間の距離 : 約15m
・アンテナ設置高さ : 約1.0m
・送信出力 : 13dBm
・BW : 125kHz
・SF : 10
・Preamble : 8bit
・CRC Error Check : ON
・ACK MODE : ON
・リトライ回数 : 0
・データ長 : 200byte
・送信回数 : 100回

まず、単純にアンテナでの比較を行うため、受信側のLR0002へ接続するアンテナを切り替えて測定を実施します。
今回は以下の3種類のアンテナを使用しました。
・小型PCBアンテナ
・卓上用アンテナ(日本アンテナ株式会社製)
・屋外用アンテナ(日本アンテナ株式会社製)

※これらアンテナは全て弊社モジュール技術基準適合証明取得時に登録済みのものとなります。

それぞれの測定結果は以下の通りとなりました。

[送信側:小型PCBアンテナ – 受信側:小型PCBアンテナ]
平均受信感度 : -80.0 dBm

[送信側:小型PCBアンテナ – 受信側:卓上用アンテナ]
平均受信感度 : -66.5 dBm

[送信側:小型PCBアンテナ – 受信側:屋外用アンテナ]
平均受信感度 : -60.1 dBm

※受信感度レベルの目安は以下の通りです。
-80dBm以上:良好。
-110dBm以上:通信可能。
-110dBm未満:通信品質悪い

15mという近距離にも関わらず、各アンテナにて約10dBm程度の差が出る事が分かりました。
-10dBmというと小さな差異に思えますが、実際の通信距離、特に数kmとなる場合においては、大きく影響する値となります。


次いで、送信側と受信側の間に障害物がある状態で計測を実施します。
上記、見通し位置での測定結果と比較のため、送信側/受信側の距離は15mで固定しています。
短距離であるために屋内に適するPCBアンテナのみを使用して計測を行った結果、以下のような結果となりました。

[送信側:小型PCBアンテナ – 受信側:小型PCBアンテナ]
平均受信感度 : -84.0 dBm

見通し状態における小型PCBアンテナの感度(-80.0dBm)とくらべて、4dBほど感度が低い数値となりました。
このことから、近距離での通信においても、送受信機間に障害物があることにより受信感度は悪化することが分かります。
※障害物の有無のほかにも、障害物自体の材質や、送受信機の周囲に電波を反射させる物質があるかどうかで受信感度の低下具合は変化します。

数十km以上の距離での通信を想定するケースにおいては、障害物による受信感度の悪化はより顕著になります。
LoRa通信が本来の実力を発揮するためには、いかに見通し(直線状に障害物の無い位置)を確保するかが重要になることが分かります。

まとめ

今回の測定結果から、以下のことが実証できました。

・アンテナの種別が変わると受信感度が大幅に変わる
・送信機/受信機の間に遮蔽物があると受信感度が悪くなる

実際の使用環境においては、上記要素の他にも、
・アンテナの向きや高さ
・周辺環境(アンテナ近くに電波を反射するものや大量の電波を放出するものがある等)
などの様々な要素で受信感度やエラー率が変化します。

どんな無線通信においても、カタログに書かれたスペックを発揮するために重要なのは、

使用する環境に合わせて
適切な特性をもつアンテナを、最適な位置に設置すること

ということですね。

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