前回のDT+Trace新機能 前編では、従来からある機能をより向上させたものについてご紹介しました。
今回の後編では、新規追加された機能をご紹介いたします。
まだ前編を読まれていない方は、是非そちらも併せてチェックしてください!

ロジック信号のテストポイント対応

DT+Traceが、ターゲット機器からのロジック信号のHigh/Lowを1つの通過情報として認識するようになります。
ロジック信号の出力にはターゲット機器側の空きピンを使用します。
この機能を使うことで、従来あった高速テストポイントよりもさらに高速で通過情報を収集できるようになり、
実行時間の計測が困難であった箇所の実行時間の動的解析、周期時間の動的解析が可能になります。
また、シビアな実行タイミングで行われる処理の計測をする場合にも役立ちます。

この機能は、DBOX+Trace付属のLogic Boardを使用するため、
DBOX+Traceを使用しない接続方式(Ethernet、UART、CAN)ではご使用いただけません。

ロジック信号を通過情報として扱う方法には以下の2種類があります。

ロジック信号を「テストポイントの通過情報」として関連付ける。

こちらは、ロジック1CHに対して、1つのテストポイントを割り当てる方法です。
最大8つのテストポイントの割り当てが可能です。
各CHへのテストポイントの割り当ては、DT+Traceアプリケーションから設定できます。

割り当て設定をしてから、ドライバファイル(ターゲットのI/Fを使用するアルゴリズムが書かれているソースファイル)にロジック信号をテストポイントとして扱うための処理を追記します。
この状態でレポートデータ取得を開始すると、High⇒LowまたはLow⇒Highの切り替わりが、紐づけられたテストポイントの通過情報として認識され、取得したデータの解析においては従来通りのレポート解析結果が表示されます。
※C/C++のみ使用可能

以下はロジック信号テストポイントを使用して取得したデータです。

赤枠がロジック信号をテストポイントの通過情報として関連付けた箇所、それ以外がGPIO 4Bit接続で通過情報を出力した箇所です。
弊社のテスト環境において、従来のテストポイントによる通過情報の出力にかかる時間に比べて、1/5ほどの速度で通過情報が出力されていることがわかります。
※通過情報を出力する時間はターゲットや接続方式によって異なります。

ロジック信号を「特定の関数/区間の通過情報」として関連付ける。

1つのCHに対して、ロジック信号のHigh/Lowを、1つの関数の実行または任意の区間の実行として割り当てる方法です。
最大8関数または区間の紐づけが可能です。

こちらは、テストポイントの割り当て設定は必要ありません。
ソースコード上にロジック信号のHigh/Lowを切り替える処理を追記します。
・High⇒Lowエッジ:関数/区間の開始
・Low⇒Highエッジ:関数/区間の終了
と認識されます。

ロジック信号を「テストポイントの通過情報」とするときよりもさらに高速で(最速)処理で通過情報を取得できます。
取得した通過情報は、専用の解析レポートでの確認となります。
※テストレポート上にレポートデータとして表示されず、ソースコードとの同期機能などは使用できません。

以下が専用の解析レポートです。
「ロジック変換レポート」というレポートが新たに追加され、任意の関数/区間の時間の情報が確認できます。任意のCHをダブルクリックすると、各CHに出力された関数/区間の1回ごとの詳細情報が「ロジック変換詳細リスト」として表示され、1回ごとの時間情報が確認できます。

カバレッジ専用モードの拡充

カバレッジ計測専用のモードで使用できる接続方式が追加されました。
今回のアップデートにより、ファイル書き出し接続のほか、以下の方式に対応しました。
・GPIO 4Bit
・GPIO 2Bit
・SPI
・I2C
・Ethernet

これまではテストポイントの量を調節して行っていたカバレッジ計測が、容易にできるようになります。※C/C++のみ使用可能
カバレッジ専用モードでは、従来とは異なるドライバファイルを使用します。テストポイント通過で出力されるトレース情報をbit単位で管理し、ターゲット機器内のRAMに一時的に取り溜めて、あとからまとめて読み込む仕様となります。

本機能は、カバレッジ計測に特化したモードであり、機能使用中は実行経路の解析やパフォーマンスの計測はできません。

通信ラインモニタ機能

SPIやI2C、UARTといった、通信ラインをモニタ出来る機能が追加されます。
ソフトウェアの動きと各通信の内容が正しいかどうかを照らし合わせて確認できます。
ソフト開発者の作業軽減や、ハード担当者との意思統一に使用したり、マイコンソフトの評価など、様々なシーンで活躍できる機能です。
こちらもDBOX+Traceを使用する接続方式でのみ使用できます。

DBOX+Trace付属のLogic Boardを使用して、SPI / I2C / UARTを各1CHずつ解析できます。
各CHのHigh/Lowをトリガーにして波形をキャプチャし、パケット単位の情報として解析します。

また、コマンドファイルというフォーマット指定ファイルを作成できます。
コマンドファイルに記されたフォーマットに従って、通信ラインから取得したパケットデータを解釈し、専用のレポート上に見やすく表示させます。

また、パケットサイズやデータなどをフィルタリングできる機能もあります。

以下が通信ラインモニタ画面です。CommandカラムやInfoカラムは、コマンドファイル内で指定したフォーマットに合わせて表示されます。

変数スコープオーバーレイ表示

変数スコープは、変数の変動をグラフィカルに確認できる機能です。
今回のアップデートでは、複数の変数のグラフを重ねて確認できるようになりました。
従来の変数スコープでは、1つのビューで同時に複数の変数値をグラフィカルに見ることができましたが、この複数の変数値の変動を1つのグラフに重ね合わせて表示できるようになります。

これにより、相対的に遷移する変数値が正しく切り替わっているかどうかなど、実機を実際に動かしているからこそ可能となる解析アプローチが増えました。

以下、Var4のビューにVar6の変数遷移を重ね合わせた画面です。※画像をクリックすると拡大表示されます。

まとめ

実機を動かしながらソフトウェアの内部まで把握し、その結果を解析・分析できる。
そんなDT+Traceならではの解析方法が、またパワーアップしました。
今回の機能アップデートは、多くのDT+ユーザー様の開発効率を大幅に改善しご負担を軽減するものである、と自負しております。

「温故知新 故きを温ねて新しきを知る」という言葉にありますとおり、新旧を問わず、様々なお客様の声を基に、改良のための研究開発を積み重ね、皆様により良いテスト環境をご提供するため、日々努力しております。今後とも、変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

今回ご紹介した機能は、2021年9月現在開発中のものとなります。
リリース時の実際の仕様とは異なる場合がございますので、予めご了承ください。
なお、ご不明な点につきましては、弊社サポートチームまでお問い合わせください。
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動的、継承。DT+シリーズ、新登場。

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