組込み開発のソフトウェアの品質保証において、今、自動テストが加速的に進んできています。
しかし、いざ、自動テストを自社環境に導入しようと思っても、工数や投資が増えるばかりで成果が伴わない…というお悩みに直面することも少なくありません。

自動テストで成果を上げるためには、自社にとって効果的な自動化を考えること、またそのために工数やコストは抑えながら環境を構築することが重要です。これらを、あらかじめ効果を評価する指標である「ROI(Return on Investment:投資利益率)」に落とし込むことで、導入したけど効果が上がらない、という失敗を防ぐことができます。

今回の記事では、ROIに焦点を当て、組込み開発における自動テストのメリットにはどのようなものがあるか?自動テストの環境構築をプラットフォームに頼る場合のメリットは?ということについて探ってみたいと思います。

CONTENTS
  1. 自動テストのROIをどう考えるか?
  2. 自動テスト環境の構築に必要な要素
  3. 組込み開発における自動テストの「導入効果」とは?
  4. 自動テスト環境構築プラットフォームを利用することによるメリット
  5. まとめ
  6. 自動テスト環境を構築するためのツール紹介
 

1. 自動テストのROIをどう考えるか?

ROI(Return on Investment:投資利益率)」とは投資対効果を示す指標で、特定の投資によって得られる収益をその投資額で割ったものです。
組込み開発における自動テストのROIは、ソフトウェアの品質向上と開発効率化など自動テストによって得られるメリットを、自動テストの導入にかかるコストに対して評価するものとなります。

テストの自動化はテストカバレッジを向上させ、バグの早期発見と修正、開発効率の向上、品質向上、継続的インテグレーションと継続的デリバリーのサポート、顧客満足度の向上など、多くのメリットをもたらします。
これらのメリットにより、自動テストの導入は組込み開発プロジェクトの成功に不可欠な要素となっています。

 

2. 自動テスト環境の構築に必要な要素

自動テスト環境の構築に欠かせないのが、自動テストを実行するためのITインフラストラクチャーやツールの整備です。
自動テストによるソフトウェアの品質確保と開発効率向上を目指すための、適切なテストツールとフレームワークの選定、テストスクリプトの作成、テスト対象の環境設定、テストデータの準備などが含まれます。
また、CI/CDパイプラインへの統合や自動テストの定期実行、テスト結果の監視も重要な要素となります。

自動テスト環境の構築により、定量的なテストカバレッジの向上やリグレッションテストの迅速化が可能となり、品質の向上と素早い開発サイクルの実現が期待されます。

自動テスト環境の構築にはプラットフォームを利用する方法もあり、専門知識不要でかんたんにセットアップが可能になります。

 

3. 組込み開発における自動テストの「導入効果」とは?

それでは、組込み開発において自動テストを導入した場合、
どのような導入効果があるのか?を考えてみましょう。

1. 品質向上と信頼性の確保

組込みシステムは、高い信頼性と品質が求められる分野です。自動テストは、網羅的なテストを効率的に実行するため、不具合やバグを早期に発見できます。これにより、製品の信頼性を高め、不良品のリリースを防ぐことができます。品質の向上により、製品の長期的な成功と顧客満足度の向上が期待できます。

2. 開発効率の向上

組込み開発はリリースサイクルが短くかつ要求される品質が高いため、効率的な開発プロセスが重要となりますが、自動テストを導入することにより、テストケースの再利用や効率的なテストの実行が可能になります。
また、手動で行うテスト作業の負担が軽減され、開発者はより多くの時間をプログラム開発に集中できます。
開発効率の向上により、製品の迅速な開発と競合他社との差別化が可能となります。

3. バグの早期発見と修正

バグや不具合が本番環境にリリースされると、修正には時間とコストがかかるだけでなく顧客の信頼を失う原因にもなります。自動テストを導入することにより、バグや不具合を早期に発見し迅速な修正が可能となります。
修正コストの削減と顧客信頼の向上を実現し、製品の競争力を高めることができます。

4. リグレッションテストの効率化

組込み開発では、ソフトウェアの変更が頻繁に行われます。自動テストによりリグレッションテストを効率化し、変更が既存の機能に影響を与えていないことを確認できます。
自動テストを導入することで、開発者は安心して新しい機能の追加や修正を行うことができます。
リグレッションテストの効率化により、開発スケジュールの遅延を防ぎ、製品のリリースサイクルを迅速化することができます。

5. 顧客満足度の向上

製品の品質が向上し、バグや不具合が少ない製品は顧客にとって価値が高くなります。
自動テストにより、高品質で信頼性の高い製品を提供することができます。顧客満足度の向上により、顧客ロイヤルティの向上や口コミによる新規顧客の獲得が期待できます。
また、製品の品質が向上することで返品やクレームのリスクが低減し、カスタマーサポートの負担が軽減されるという利点もあります。

 

4. 自動テスト環境構築プラットフォームを利用することによるメリット

前述のとおり、組込み開発における自動テストの導入は多くの効果をもたらします。自動テストを導入するためには効果的な自動テスト環境を構築することが重要になりますが、その際プラットフォームを利用する方法もあります。
自動テスト環境構築のためにプラットフォームを利用すると、ROI向上の観点からどのようなメリットが得られるのでしょうか。

1. 簡易なセットアップと運用

自動テスト環境の構築には、専門的な知識やスキルが必要とされます。プラットフォームを利用することで、自動テスト環境のセットアップや運用が簡易化されます。プラットフォームは、既にテスト対象のハードウェアやシミュレータ、テストツールを統合して提供しているため、手間のかかる環境構築の手間を省くことができます。

2. 自動テストスクリプトの効率的な管理

自動テストでは、テストスクリプトの作成と管理が重要なタスクです。プラットフォームは、自動テストスクリプトの効率的な管理をサポートします。バージョン管理やテストスクリプトの再利用、テスト結果の集約など、テストスクリプトの効率的な管理を実現することで、テストの生産性を向上させることができます。

3. 継続的インテグレーションと継続的デリバリーのサポート

組込み開発では、継続的インテグレーション(CI)と継続的デリバリー(CD)が重要なアプローチとなっています。プラットフォームは、自動テストをCI/CDパイプラインに統合することをサポートし、ソフトウェアの変更がリリース可能な状態であることを確認します。自動テストをCI/CDに統合することで、迅速なデリバリーと品質の向上を実現できます。

4. 安定した環境とリソースの最適化

自動テスト環境の構築には、安定したハードウェアリソースが必要です。プラットフォームは、安定した環境とリソースの提供を保証し、テストの安定性と信頼性を高めます。また、プラットフォームはクラウドベースで提供されることが多いため、必要なリソースの最適化も容易です。これにより、開発チームは安定したテスト環境で効率的にテストを実行できるようになります。

 

5. まとめ

以上の内容から、組込み開発における自動テストと自動テスト環境構築は、製品の品質向上と開発効率化に重要な役割を果たすことがお分かりいただけると思います。
自動テストを導入することにより、品質向上と顧客満足度の向上が実現します。また、自動テスト環境構築の際にはプラットフォームを利用することによって、簡易なセットアップと運用、自動テストスクリプトの効率的な管理、CI/CDのサポート、安定した環境とリソース最適化が実現でき、効果的な自動テストの実現と開発プロセスの強化が期待されます。

組込み開発プロジェクトにおいて、自動テストと自動テスト環境構築の重要性を理解し、適切なROIを実現するためにプラットフォームの活用を検討することが必要と言えます。

 

6. 自動テスト環境を構築するためのツール紹介

自動テスト環境を構築するためのプラットフォームとしては、以下のような製品があります。

TestRail
テストケースの管理と実行をサポートするテスト管理ツール。
自動テストスクリプトと統合して、効率的なテスト実行と結果の管理を実現します。

Jenkins
継続的インテグレーションと継続的デリバリーを実現するオープンソースの自動化ツール。
自動テストをCI/CDパイプラインに統合し、開発の効率化と品質向上をサポートします。

AWS Device Farm
クラウドベースの自動テスト環境プラットフォーム。
組込みシステムのテスト対象デバイスを提供し、自動テストの実行とリソースの最適化を実現します。

AUTOmeal
ハートランド・データの 「はじめやすい」・「つづけやすい」・「ひろげやすい」がコンセプトのテスト自動化プラットフォーム。
組込み機器のテスト自動化環境の構築を、もっと素早く、お手軽にご提供します。

これらのプラットフォームを活用することで、組込み開発における自動テストの実現とROIの向上が期待できます。
プロジェクトのニーズに合ったプラットフォームを選定し、成功を導くための道具として活用しましょう。

テスト自動化ツールまとめ
~どれを使えばいいのか書いてみた~

年々、大規模化するソフトウェア開発。品質に対する要求レベルも上昇しており、テストにかかる工数も増加しています。そこで、自動化へ一歩踏み出す皆さんが導入からつまずかないよう、テスト自動化の始め方と自動化ツールについてまとめてみました。
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