2020年10月2日。ついにハートランド・データの新製品「動的テストツール DT+」がベールを脱ぎました。DT+のコンセプトとは。そして、従来のDTシリーズからDT+に継承されること、DT+で新しくなることは何か。ハートランド・データ代表取締役であり、DT+の発案者である落合 亮の熱い想いを探ります。
※本記事は、2020年10月に開催されたWEBイベント【Heartland Day 2020 ONLINE】にて公開したスペシャル記事です。
多様性のあるハードウェア群で「できることをもっと広げたい」
高松:ついに、動的テストツールDT+が発表になりました!DT+のブランドロゴは、「3つのD」が組み合わさった形になっているのですよね(右図参照)。「3つのD」にはどんな意味があるのでしょうか。
落合:DX(デジタルトランスフォーメーション)と Diversity(多様性) そして Dynamic(動的)です。
高松:ありがとうございます。今日は、落合社長がどんなことを考えてDT+の開発に至ったのか、また、これらの「3つのD」に込めた想いをお聞きしたいと思います。
さっそくですが、ズバリ、なぜ新しい動的テストツールを出そうと考えたのでしょうか?
落合:DT10を出して10年。(※1) 次の新しい製品を提供したいというのがまずあって。
動作しているソースコードの中で、”どの部分が動いているか”わかるようにしたいっていうのが、従来のDTシリーズ。ソフトウェアエンジニアが一番大切なソースコードにフォーカスした、ソフトウェアエンジニアのためのテストツールだよね。
※1 動的テストツールDT10は2019年5月に10周年。2020年には11周年を迎えた。
高松:そうですね。DT10は開発現場のツールというイメージがあります。
落合:ただ、それだけだと面白くないなって。
次に何を考えるかというと、実際に動いている機械や製品の、電気・回路の動きだとか、ハードウェアの動きがわかるように、もっとできることを広げたい。もっと多様性のあるハードウェア群を作りたいなと思った。
なので、今回は新しくハードウェアとしてAnalog Box(※2)を独立させて、なおかつ、カメラ機能を取り入れるという提案をしました。
※2 Analog Box:DTシリーズのオプションユニット。CPU周辺のセンサやポートなどのハードウェア状態(電圧やロジック)が計測可能。プログラムのトレース結果と連動させて確認できる。
刷新されたハードウェア。左からDBOX+Analog /DBOX+Trace/DBOX+Camera。
「動的」の基本路線はずらさない。
高松:前回、「DT10の開発秘話」をインタビューさせていただいた際にも、今後はダイバーシティ(多様性)に対応したいと仰っていましたね。
落合:我々の得意とする組込み業界の中でも、ソフトウェア開発以外に商品開発だとか生産・製造だとか、もっと業務があるよね。そういったところにも広げたいなって。
生産現場には不良率って考え方があって、1万台とか10万台とか商品量産すると、そのうち数パーセントは不良品が出る。それを抑えるにはどうしたらいいのだろう?って考えています。生産現場の不良率を下げたい。
高松:具体的にはどのようなことをお考えですか?
落合:そのためにはデジタルトランスフォーメーション(DX)だよね。
実際に長時間動かしてみて、問題が起きないのかっていうことをテストする必要があるでしょ。でも、ひたすら「手作業で」テストするの?って。ツールを使ったテスト自動化がDXの一つの方向性なんじゃないですかね。
でも、それはソフトウェアだけじゃ解決できないよね。DT10のDynamic Tracerだけだと力不足。
部品のばらつきって、電圧信号や電流に現れてくるじゃない。だから、ハードウェア回路の動きだとか、実際に何が起きているのかっていう映像の力だとかが必要になってくる。
高松:そこで先ほどおっしゃっていたDBOX+Analog(Analog Boxの後継機)とDBOX+Cameraなのですね。
落合:DBOX+Analogで電流・電圧を長時間取得することによって、何かあったら値のばらつきとか、さらにソフトウェアとどう関係しているのかを追いかける、という使い方ができると思うんですよね。でも、従来のDT10では、Analog BoxはDynamic Tracerと一緒に使う必要があったので、サイズも大きいし、Analog Boxだけ買う、ということができなかった。なので、今回Tracerと分離し、単体で動作する一つのハードウェアにしました。
高松:DBOX+Analogでは時間情報も取れるのですか?
落合:取れます。
高松:ということは、大量に取得したデータから、異常が起きた時間の周辺だけさかのぼって確認することもできますね。
落合:DT+の一つの大きな方向性として、必ずデータはタイムスタンプと一緒に取ることにしています。
高松:DBOX+Cameraもですか?
落合:そうです。
あとで、それぞれ取得したデータをマッチングできるようにしていて、何時何分何秒にこのデータが出たよっていうことがわかるようになっています。従来のDTシリーズから、Dynamic(動的)の基本はタイムスタンプ。そこの基本路線は、DT+でもずらしていません。
高松:今、特に製造についてのお話を伺ったのですが、既にDTシリーズを使っていただいている開発現場もDT+で変わることはありますか?例えば、リモートデバッグでの活用ですとか。
落合:1年前に新製品の構想を出したころにはそういうの(リモートワークやコロナ禍)がなかったからそこを目指したわけじゃないんだけど、リモートワークで機器の映像を見たいという時にDBOX+Cameraで映してデバッグに使うという方法はあるよね。ワーキングスタイルの多様性に対応できると思います。
あと、DBOX+Analogもコンパクトになっているので、重たいデジタルオシロを持って帰る必要がなくなって楽になるよね。
高松:デジタルオシロを持って帰っている人っていますか?
落合:うちの会社でもいるよ。電源とかさ。
高松:車で持ち帰るのはまだ何とかなりそうですが、電車通勤の人はどうするのでしょう。
落合:そんなことできないから、会社に行くしかないかもね。
DXの肝は「今までやっていたことをやらなくすること」
高松:最後に、今後に向けてのメッセージをお願いします。
落合:ハートランド・データとしては、DXでもっとデジタル化を進めていきたい。新しい菅(すが)内閣もデジタル庁を作るって言っているよね。
DXの肝って、デジタルの力を使って今までやっていたことをやらなくすることだと思うんですよね。「やり方を変える」ではなく、「なくす」。なので、そういう視点でDXを進めるべきだと思っています。ぜひDT+を活用してください。そのための提案も弊社はしていきます。
DT+も商品群をこれからも拡張していきますが、我々はリアルな時間軸を大切にしていきます。これからもご期待ください。
高松:ちなみに…DT+の商品群について既に構想はありますか?
落合:○○○○○○○を考えていますね。○○○○ ○○○○○○○のもっと高機能版を使いたいじゃない?
※ネタバレになってしまうので伏せさせていただきました
高松:これからも楽しみですね!ありがとうございました!
つい先日完成した新社屋・ソフトウェアデザインセンターで取材を行った。落合は「今後もハートランドは時代を先行く新しい技術で社会貢献をしたい。ここはそのための空間。さらにクリエイティブな空間を創り出して、人もクリエイティブになってほしい。」と述べた。
動的、継承。DT+シリーズ、新登場。
今までのDTシリーズの機能はそのままに、
パーソナルなデバッグから、テストの自動化、リモートテストまで、
多様な開発スタイルに幅広く対応できる、進化する動的テストツール、
それがDT+。