ソフトウェアテストを学び始めると、よく出てくるのが「動的テスト」と「静的テスト」です。
言葉だけを見ると少し難しそうですが、違いは意外とシンプル。ざっくり言えば、プログラムを動かして確かめるのが動的テスト、動かさずに仕様書やソースコードを確認するのが静的テストです。

ただ、実際の開発現場では「どちらを選ぶか」だけで話は終わりません。静的テストで早い段階から欠陥を探し、動的テストで実際の動作や性能を確かめる。両方をうまく組み合わせることで、一つの方法だけでは見つけにくい問題まで確認できるようになります。

では、どのような場面で動的テストを選び、どの段階で静的テストを取り入れるとよいのでしょうか。この記事では、それぞれの特徴やメリット・注意点を整理しながら、開発工程での使い分けを具体例とともに紹介します。

動的テストとは

動的テストとは、テスト対象を実行し、その結果や途中の動きを確認するテストアプローチです。ISTQB Glossaryの「dynamic testing」でも、テストアイテムの実行を伴うテストアプローチと説明されています。

具体的には、実行結果が期待値と一致するかを確認する機能テストだけでなく、処理時間、メモリ使用量、ユーザー操作への応答など、動かさなければ観測できない性質も対象になります。

組込み開発では、実機にソフトウェアを書き込み、ボタン操作、通信、センサー入力などを与えて動作を確認する場面が代表例です。実際のハードウェアとソフトウェアが組み合わさった状態で確認できるため、タイミング依存の不具合や、実行環境による挙動の違いを見つけやすくなります。

動的テストの代表的な方法

ひと口に動的テストといっても、誰が何を確かめるかによって進め方は変わります。具体的には、テスターによる機能テスト、開発者による動作確認・デバッグ、動的テストツールを使ったテストの3つがあります。

テスターが製品を操作する場合は、仕様どおりに機能するか、操作中に問題が起きないかを確認します。プログラムの内部構造を意識せず、入力と出力を中心に見るブラックボックステストです。

一方、開発者がデバッガを使う場面では、内部構造や実行経路を追いながら原因を探ります。こちらはホワイトボックステストに当たります。

さらに、テスターの視点と開発者の視点を組み合わせて確認したいときは、動的テストツールが有効です。内部構造を把握したうえで実際の機能や挙動を確認するため、この方法はブラックボックステストとホワイトボックステストの中間にあたる「グレーボックステスト」と呼ばれます。

グレーボックステストについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

みんな知ってるホワイトボックステスト、ブラックボックステスト。
でもグレーボックステストとは…?
グレーボックステストの記事アイキャッチ

内部構造を確認するホワイトボックステストと、外部から仕様を検証するブラックボックステスト。その違いを整理しながら、両方の視点を組み合わせるグレーボックステストを紹介します。

動的テストのメリットと注意点

動的テストの強みは、実際に起きた挙動を確認できる点にあります。性能不足や競合、通信タイミング、低頻度の異常など、コードを読むだけでは判断しにくい問題も調査の対象です。

ただし、動的テストには、実行可能なソフトウェアとテスト環境が必要です。実機を使う場合、準備や操作、結果の確認に時間を要することもあります。

もう一つ注意したいのが、確認できる範囲です。動的テストで確認できるのは、実際に動かした部分に限られ、未実行の経路には欠陥が残る可能性があります。そのため、確認漏れを減らすには、テスト条件とカバレッジを意識した設計が欠かせません。

カバレッジの考え方や、テスト結果をエビデンスとして管理する方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。

テストで押さえたいトレーサビリティとカバレッジのエビデンス管理
トレーサビリティとカバレッジの記事アイキャッチ

要件・テストケース・テスト結果をどう紐づけるか。トレーサビリティの考え方と、テストの抜け・漏れを確認するカバレッジ、品質を示すエビデンス管理の関係を解説します。

静的テストとは

ここまでは、プログラムを動かして確かめる方法を見てきました。対して静的テストとは、テスト対象を実行せずに確認するアプローチです。ISTQB Glossaryの「static testing」でも、テストアイテムを実行しないテストアプローチと説明されています。

確認するのはソースコードだけではありません。要件定義書や仕様書、設計書、テスト仕様書も対象です。つまり、プログラムがまだ動かない段階から始められます。ここが動的テストとの大きな違いです。

具体的には、静的テストでは、人によるレビューと静的解析ツールがそれぞれ異なる役割を担います。人の目で曖昧な要件や記述の矛盾、設計上の抜けを探し、ツールでコーディング規約違反や到達不能コード、複雑度、データフロー上の問題などを機械的に検出します。

静的テストのメリットと注意点

静的テストの利点は、欠陥を早い段階で見つけやすいことです。修正範囲がまだ小さいうちに対処できれば、後工程での大きな手戻りを抑えられます。レビューを通じて、仕様に対するチームの認識をそろえる効果もあります。

とはいえ、静的テストだけではわからないこともあります。実際の処理時間や負荷、ハードウェアと組み合わせたときの挙動は、コードや文書を見ているだけでは確認できません。

加えて、静的解析ツールはコードを機械的にチェックするため、指摘事項が膨大になりがちです。出てきた指摘を一つずつ確認するだけでも時間がかかることがあります。

すべてを同じ重さで追っていては、本当に見るべき問題が埋もれかねません。そこで、プロジェクトに合った基準を設け、対応の優先順位を決めておくことが大切です。

動的テストと静的テストの違い

比較項目 動的テスト 静的テスト
テスト対象の実行 実行する 実行しない
主な対象 実行可能なソフトウェア、システム、実機 要件、仕様、設計、ソースコード、テスト仕様
確認しやすい内容 機能、性能、タイミング、実行経路、実環境での挙動 曖昧さ、矛盾、規約違反、構造上の問題
実施時期 実行可能になった後 開発初期から実施可能
代表的な方法 機能テスト、性能テスト、実機テスト、動的解析 レビュー、静的解析

こうして並べてみると、動的テストと静的テストは、どちらか一方を選ぶものではないとわかります。静的テストでは、成果物に入り込んだ欠陥を早い段階で探す。動的テストでは、実行中に現れた失敗を手掛かりに原因を追う。それぞれが得意な場面を受け持つ、補完関係にあります。

開発工程ごとに静的テストと動的テストを組み合わせる

使い分けを開発工程に当てはめると、役割がよりはっきりします。要件定義や設計の段階では、レビューで曖昧さや矛盾を減らす。実装中はコードレビューと静的解析で、規約違反や構造上の問題を早めに拾います。その後、単体テスト、結合テスト、システムテストへ進み、実行時の機能や性能を確かめていく流れです。

組込み開発では、シミュレーター上で問題がなくても、実機で動かして初めて見つかる不具合があります。そのため、静的テストとシミュレーションだけで終わらせず、最後は実機を使った動的テストで差分を確認します。

重要なのは、同じ観点を何度も確認するのではなく、それぞれの手法に得意な領域を任せ、結果を次の設計やテストへ戻すことです。この循環が品質を支えます。

目的に合わせて支援ツールを選ぶ

動的テストを効率よく進めるには、確認したい内容に合ったツールを選ぶことが大切です。実行経路やカバレッジ、処理時間を詳しく確認したい場合は動的解析ツール、同じ実機テストを繰り返したい場合はテスト自動化ツールが選択肢になります。

たとえば、不具合が発生するまでの実行経路を追いたい、テストで実行されていない箇所を把握したい、処理時間のばらつきを調べたいといった場面では、ハートランド・データの「動的テストツールDT+」を利用できます。実行ログをもとに、結果だけでなく、そこに至るまでの動きも確認できるためです。

実際、DT+を導入した企業の公開事例では、長時間運転中に発生する不具合をオシロスコープで捉えられず、原因の特定に苦戦していました。そこでDT+を使って波形とSPI通信データを同時に取得した結果、従来は1週間以上かかっていた不具合解析を数時間に短縮できました。不具合の発生状況やDT+の活用方法は、以下の導入事例で詳しく紹介しています。

FPGA開発におけるDT+の活用事例を見る →

一方、同じ操作や計測、合否判定を何度も繰り返す回帰テストでは、「テスト自動化プラットフォームAUTOmeal」が役立ちます。人が繰り返していた実機操作を自動化し、判定結果やログを保存できるため、同じ条件で継続的に確認しやすくなります。

もちろん、ツールを導入してもテスト設計そのものが自動的に決まるわけではありません。検出したいリスクや実行条件、期待結果を整理し、適切な確認方法を選ぶことが大切です。

まとめ

最後に、ここまでの内容を整理しておきましょう。動的テストと静的テストの違いは、テスト対象を実行するかどうかです。

要件や設計、コードの問題を早い段階から探せるのが静的テスト。一方、動的テストでは、ソフトウェアが動くようになった後に機能や性能、実行時の挙動を確かめます。

それぞれに得意・不得意があるため、どちらか一方だけでは確認できる範囲に限界があります。だからこそ、開発工程に合わせて互いに補完しながら取り入れることが大切です。

動的テストで確認できる範囲や、実行ログを使った解析方法をもう少し詳しく知りたい方は、動的テストツールDT+の製品ページもご覧ください。

動的テストツール DT+
DT+

「DT+」は、プログラムの実際の動きを可視化するソフトウェア分析ツールです。実行中のプログラムの内部動作を見える化することで、不具合の原因特定や性能の分析などを効率的に行えます。開発の品質向上とコスト削減を強力にサポートします。
DT+の詳しい機能や活用事例は、こちらでご確認いただけます。

動的テストや静的テストに関するよくある質問

Q. 動的テストと静的テストの最も大きな違いは何ですか?

テスト対象を実行するかどうかです。
動的テストは実行結果や挙動を確認し、静的テストは実行せずに仕様書やソースコードを確認します。

Q. 静的解析と静的テストは何が違いますか?

静的テストは、実行せずに成果物を確認する方法全体を指します。
静的解析はその一部で、主にツールを使ってソースコードなどを解析します。レビューも静的テストに含まれます。

Q. 動的テストだけで品質を確認できますか?

十分ではありません。実行した条件や経路しか確認できず、要件の曖昧さや未実行部分の問題が残るためです。
レビューや静的解析と組み合わせて確認範囲を広げます。

Q. 組込み開発で動的テストが必要なのはなぜですか?

ハードウェアとの相互作用、割込み、通信、処理タイミングなど、実機でしか確認しにくい挙動があるためです。
シミュレーションと実機テストを役割分担させます。


<参考文献>